ユーザー様がオススメする映画・本をご紹介します。
ネタバレ注意でお願いします。
タイトル
「マリア 女性秘匿捜査官・原麻希 」吉川 英梨 著
あらすじ
アパートで女性の不審死体が発見された。
警察は自殺と判断するが、他殺ではないかと疑った刑事が、鑑識課の原麻希に相談する。
麻希は現場の足跡から推理を進め、女子高の文化祭へ乗りこむが、そこでチアリーダー部のコーチが死体となって見つかる。
さらに捜査を進めていくと、コーチにレイプされ、中絶したというチアリーダー部の部員がいたことをつきとめる。
一方で、彼女とコーチはラブラブだったという目撃証言も出てきて、捜査は混迷を深めていく。
ネタバレ
ネタバレを読む育った家庭環境に問題のあった少女が、チアリーダー部の部員をあたかも家族とみなして、家族をかばうような気持ちで犯罪を犯していたことがわかります。
そして、部員たちは彼女の気持ちをうざったるいと感じていたこともわかります。
感想
かなり血なまぐさい事件を扱っているにもかかわらず、どこかのどかでほのぼのした印象を受ける作品です。
たぶん、これが作者の持ち味なのでしょう。
主人公の原麻希のイメージがなんとなくサザエさんっぽくて、ユーモラスです。
「あたしをフルネームで呼ばないで」
という主人公の決めセリフも、読者に笑ってもらおうという作者の意図なのでしょう。
原麻希=ハラマキ=腹巻。親父ギャグ程度のユーモアかもしれませんが。それでいて、この腹巻、じゃなかった原麻希さん、そうとうの切れ者です。きちっと推理していきます。
殺されたコーチにレイプされて泣いている少女、でありながら、一方でふたりはラブラブで指輪を買いに行っていた、という矛盾した証言が出ます。
こういう矛盾、つまり謎が存在するというのが、ミステリーの魅力です。この謎もきちっと解き明かされていきます。
事件の捜査と並行して、原麻希の家庭問題も進行します。
小学生の長女と麻希、麻希の夫との関係がうまくいかないのです。これもまた、「どうなるんだろう」と読者をハラハラさせて、先を読み進ませる要素となっています。
そして最後にはこの家庭問題も、事件の犯人の家庭環境とシンクロする形で、きちんと決着します。
このあたりの手際もみごとだと思いました。全体に、テレビドラマの2時間サスペンスを見ているような印象を受けました。親しみやすいミステリーです。