ユーザー様がオススメする映画・本をご紹介します。
ネタバレ注意です。
タイトル
「マーラー 君に捧げるアダージョ 」
キャスト
・ヨハネス・ジルバーシュナイダー
・バーバラ・ロマーナー
・カール・マルコヴィクス
監督: パーシー・アドロン
あらすじ・内容
オーストリアの名高い作曲家、マーラーとその妻アルマとの愛と葛藤を描いた映画です。
19歳という年齢差を乗り越え結婚した二人ですが、順調に見えた結婚生活には暗雲が立ち込め、ついに夫であるマーラーは二人の問題を解決するために精神科医のフロイトの元を訪れます。
フロイトは二人の性生活の有無などきわどい質問ばかりをしてマーラーを立腹させ、彼の分析は見当違いだと思わせしめるほどですが、しかしやがてマーラーとその妻アルマとの間にある問題が浮き彫りになっていくところから二人の間にある本当の問題、そしてなぜアルマが不倫という裏切りをしたのかが明らかになっていきます。
ネタバレ
ネタバレを読むアルマはマーラーと結婚する前、非常に才能あふれる作曲家として活躍しており、またとてもピアノの上手な女性でもありました。
アルマはそんな自分を誇りに思い、また存分にその才能を楽しんでいたのに、マーラーと結婚した後は作曲することを禁じられてしまいます。
これが二人の悲劇の始まりで、大作曲家である夫の陰に隠れて無力感に苛まれるアルマは、やがて夫を裏切り別の男性と不倫の関係にはまり込んでしまいます。
精神科医のフロイトは二人の問題の原因を理解し、無意識的にせよアルマを抑圧していることが問題なのだとマーラーにわからせようとしますが、己の価値観に目がくらんでいる彼はそれをなかなか受け入れようとしません。
お互いに愛し合っているのに、男は女の保護者であり、女は男に慕うべき、という社会規範に苦しんで二人の才能あふれる人間が悩む様子が印象的な映画です。
感想
作曲家として押しも押されもせぬ名声を手に入れた夫・マーラーの陰に隠れて自分を封印しなければならなかった妻のアルマのやるせない気持ちが手に取るようにわかりました。
それは私が女性であり、家庭を持てば多かれ少なかれ夫を立てて自分を抑えなければいけないという文化に慣れ親しんでいるからこそ理解できるかもしれない心境だと思いました。
男性の中には、この映画を見てもどうしてアルマが腹を立て、ついには不倫をするのかどうしてもわからない方もいるのではないでしょうか。
単なる才能のあるなしを超えて、男と女の違いというところにまで考えが及ぶとよりこの映画を理解しやすくなるかもしれません。
マーラーやアルマが生きていた時代は100年以上も昔のことであり、当時のオーストリアは今の日本など比較にならないくらい男女の役割の差がはっきりしていたと思います。
そこには全く悪意がなくとも女性を抑圧してしまう男性の文化があったことでしょう。
男性の方が女性より上、という何の根拠もない社会規範を超えて、マーラーとアルマがこれから人間同士として深く結びついていけることを予感させるラストであったことが良かったと思います。