ユーザー様がオススメする映画・本をご紹介します。
ネタバレ注意でお願いします。
タイトル
題名「ミナトホテルの裏庭には」
作者:寺地はるな
あらすじ
閑静な場所に立っている、大正末期に建てられた古めかしい「ミナトホテル」。
そこのオーナーで塾の講師の先輩だった湊(みなと)に無理やりアルバイトを頼まれた芯(しん)は会社に内緒で夜間の受付バイトを始めます。
そこに泊まりに来る人たちはちょっと変わった人ばかり。そこで繰り広げられる暖かい物語です。
ネタバレ
ネタバレを読む訳アリのホテルに泊まりにくる人たちは皆、
「眠れない」「食べられない」
など、人には窺い知れない悩みを抱えています。
主人公の芯も職場での悩みを抱えていましたが、ミナトホテルに関わる人たちに助けられて職場を離れる決意をします。
オーナー湊の出生の秘密が明かされ、このミナトホテルを彼のために残してくれた養母(実は叔母)の真意を汲み、ホテルを守っていくことを誓います。
カギを無くして入れなかった裏庭は養親との思い出の詰まった場所でした。
感想
ミナトホテルに関わる人々はみんな優しい。その中で主人公、芯の祖父が「働くのは食うためだ。食うのは生きるためだ。生きるための仕事で、死ぬな。(中略)だから死ぬほど辛かったらその時は逃げろ」というセリフがとても心に響きました。
パワハラ、セクハラ、過労死が日常茶飯事のようにテレビや新聞で取り上げられている中、全ての人にこのおじいさんの言葉が届いたらいいのにと思いました。
忙しいという字は心を亡くすと書きますが、忙しすぎて心も、身体も限界な人。
過酷な状況の中で働き、逃げ場もなく苦しんでいる人。
今の日本の働き方、働かせ方は異常だと感じます。
ミナトホテルのような場所で、ただ眠る。それができれば、そうした場所に逃げ込むことができれば、自殺や精神疾患まで追いつめられる人は減らせるはずです。
自分の周りにそういう人がいたら、「逃げていいんだよ」と声をかけてあげることの大切さを、この話の優しいみんなから教わりました。大好きな本の一冊になりました。