「あるキング」苦みと現実感あるファンタジー

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タイトル

あるキング」 伊坂幸太郎

あらすじ

仙台に住む熱狂的な野球チームファンの山田夫妻。彼らのもとに生まれた息子「王求」が主人公です。

応援しているキングスがシリーズで惨敗し、チーム監督も不慮の事故で亡くなるといういわくある日に生まれます。

両親の熱心な指導で、王求は野球一筋に育ち、その才能を開花させていきます。

しかしその才能、そして彼自身の奇妙なほどに浮世離れした性格故に、様々な苦労を強いられます。

敬遠ばかりで打たせてもらえず。学校で疎ましがられ暴力を振るわれます。

しかし何より彼の人生の障壁となったのは、異常な両親の愛情と行動でした。

王求自身にも、両親の何かがおかしいとわかっているのですが、そんな思いを振り払いながら、彼なりの道を行こうとします。

そんな中両親は、敬遠しないようにと相手チームに金銭を渡し、息子に暴力を振るった少年に至っては傘で殴り殺してしまいます。

殺人者の息子として敬遠される王求。

しかし友人の偽名を使い、キングスのプロテストを受け、見事受かってプロ野球選手となります。

そしてその非凡な才能を発揮させるのですが、彼を快く思わない人々がここでも存在し、彼の人生を妨げるのでした。

ネタバレ

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感想

何かざらっと苦みがある、現実感あるファンタジーです。

杭のように胸に刺さるエピソードが沢山出てきます。家庭内暴力を奮う父親は四つん這いの野獣と描かれ、王求の打球で額を打ち抜かれ死んでしまいます。

王求を導くのは三人の黒づくめの魔女。彼の才能を疎んじる大勢の人々。

おどろおどろしい内容を、独特の別世界とリンクさせることで色鮮やかにし、私達に奥深い世界を想像させてくれるのです。

王求の本当の敵は一体なんだったのだろう。

そしてそれは天才ゆえのものなのか、私達にもやはりあるのものなのか。そんなことをしみじみ考えさせてくれる一冊です。

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